脳振盪とオステオパシー手技療法

脳振盪とオステオパシー手技療法
アメリカンオステオパシー協会 2016年3月号より
脳振盪は、一般的に思春期に起こることが多いです。その大半は自然に解決しますが、約11%は3か月症状が続きます。このように長引くものに対して、医療機関の治療の基準はなく、オステオパシー療法の役割も明らかではありません。ここでは、6週間のオステオパシーの治療後、通常の生活に復帰できた少女の症例を取り上げます。
頭部に3回外傷の既往がある16歳の少女で小児スポーツメディカルクリニックからの紹介でオステオパシーメディカルクリニックに来たケースです。
主訴は頭痛でした。一番最近の外傷は、5週間前にバスの中で右のこめかみに衝撃が加わったものです。彼女は否定したが外傷後健忘症が認められました。患者がさらに、吐き気、めまい、眠気、羞明、音過敏、情緒不安定、記憶と集中力、頸部の痛み、めまい、不眠症、過敏性、気分の鈍化などの症状が出ていました。
神経学的検査で局所(神経)障害、眼振、また歩行障害はありませんでした。また、クラニアル検査でCRIが少なくなっていました。蝶形後頭底軟骨結合は圧縮され、すべての滑走する動きが制限されていました。右側頭骨は内旋し、右側頭頭頂、側頭頬骨、側頭後頭の各縫合は圧縮され、受動運動がなくなっています。側頭骨の機能不全は、前庭器官や錐体部に影響し、おそらく彼女のめまいの症状、外傷からの2次性めまいの一因となっていると思われます。更に彼女の頸部傍脊椎筋の緊張を異常に高め、右側を悪化していたと思われます。後頭環椎(OA)関節は屈曲、左側屈、右回旋(FSRr)で右側に圧痛があります。局所の頸部機能不全は屈曲、右側屈、右回旋(FRSr)が見つかりました。キーリージョンは頚椎3番(C3)でした。両側の僧帽筋で緊張が高く、右側より硬くなっていました。胸郭入り口の制限は著明で、すべての滑走運動が制限されています。この体性機能障害(SD)は、おそらく患者の頭痛と慢性的な首、背中の痛みの一因となっているようでした。
検査所見に基づいて、オステオパシー手技(OMT)は始めに頸椎と頭蓋の機能不全に向けました。蝶形後頭底結合に減圧および第4脳室圧縮(CV-4)を行いました。制限された縫合の減圧には直接法を施しました。筋エネルギーテクニック(MET)、軟部組織、バランスドリガメンタステンション(BLT)、アーティキュレーションと筋膜リリースを頸部の病変に行いました。僧帽筋の抑制は両側に行われ、胸郭入口筋膜に沿ってリリースしました。すべてのメソッドは、最も制限された領域を触診し、その組織の変化についていく優しいテクニックです。
これらのテクニックは、自然治癒力を促進し、痛みを軽減し、動きが制限された部位を改善させるために患者のSDから選び実施されました。蝶形後頭底結合はなんとか賦活しCRIは改善して、すべての頭蓋骨の制限を減少できました。個々の縫合不全は同じ理由で対処されました。CV-4は、このように頭蓋および体全体の流体の交換を促進し、脳脊髄液の固有の変動性を高めるために施されました。液の流動性を促進させることは浮腫を減少させ、毒性のある副産物をきれいにし、固有免疫反応を高めることが期待できます。頸部のSDの改善は首の過緊張を軽減させ、緊張型、頚性頭痛を改善させました。最後に、胸郭入口の筋膜リリースは、流体力学(リンパ循環)を改善されるため施されました。
初診から翌日の診察には頭痛が改善し、めまい、記憶や集中力の問題及び羞明や音に対する恐怖症状も改善された。
特に1 ヶ月以上の症状を持っている脳振盪患者のメカニズムは十分に理解されていません。しかしながら、生理学的な変化、外傷性誘発による新陳代謝の変化、血流の障害、ニューロン内の代謝が阻害されるなどの問題と仮定されます。
このケースで示すように、脳振盪への他職種とのチームアプローチの一部として OMT は回復を早め、生活の質を向上させるために役立ちます。さらなる研究が必要であり、我々は、長期脳振盪症状と思春期の患者ではOMTの役割を評価するための大規模なランダム化対照試験を実施したいと考えています。

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